「沖田艦研究に関して、いろいろ分かった」
「もうおわり?」
「ここから先は独自研究の部類に入るの」
「まだ続くのかい」
「思ったことがあるので」
「というと?」
「以下の事実がある」
- 沖田艦は1回しか射撃していない
- 4つも砲塔があるのに1つしか使っていない
- 撃つまでかなりの時間を要する
- 古代艦が助けに来るとき、射撃していた砲塔は正面を向いていてもう撃つ気すら見せていない
「そこから何を推定したのだ?」
「沖田艦は本来なら全ての砲塔で撃つのが設計上の運用方法だと思うが、そうはしていない。たった1つの砲塔で撃った。それはなぜか」
「なぜだ?」
「エネルギーを集中すれば撃ち抜けるという仮説に沿った行動だったのではないか?」
「全砲塔で撃って撃ち抜けなかった過去があるってことだね」
「そうだ。新しい戦法で勝てるかも知れないと考えての作戦だ。これで、【明らかに負けると分かっていて冥王星まで行く疑問】が解消される」
「今度は勝てるかも知れない可能性があったわけだね」
「そして、1回ごとに射撃にはエネルギーを集中するための時間が必要とされる」
「待ち時間が意味を持つわけだね」
「しかも、2回目がすぐ撃てない。それまで逃げに徹することしかできない」
「古代守艦の助けが要るわけだね」
「その間、主砲は撃てないから敵に向ける意味も無い」
「正面を向けてロックしてしまうわけだね」
「沖田は本来なら2回目を撃つ気だったが、その前に艦隊が全滅寸前。撤退を決意したわけだ」
「ではなぜ古代守艦が残ったのだ?」
「敵の小型艦をミサイルで撃破できるミサイル艦17号なんか、ゴミのような存在。本当に敵を撃破するためのアイデアを出せるのは沖田だけ……ではないのかな?」
「では、なぜ宇宙戦艦ヤマトの主砲はガミラス艦を撃ち抜ける?」
更に推論 §
「ここからは更に推理なんだが」
「まさか」
「実は沖田艦の主砲はガミラス艦を撃ち抜けたのではないだろうか」
「えっ? 撃ち抜けてないじゃん」
「だからさ。4つの砲塔で撃っても撃ち抜けなかったのだ」
「うん」
「だから、撃つ砲塔を減らして1本のビームあたりのエネルギーを強化して撃ち抜こうとした。沖田はちゃんと計算して勝算ありと考えたに違いない」
「でも、撃ち抜けなかったよ」
「そうだ。実は確実を意識してエネルギーを載せすぎた結果、スピードが速すぎて装甲を貫通する前に弾かれてしまったのではないだろうか」
「速いとダメなの?」
「物理的な衝撃や、熱エネルギーを与え続けるためには、ある程度の時間接触し続けねばならない」
「うーむ」
螺旋の謎 §
「そうすると、ヤマトのショックカノンの螺旋の意味が見えてくる」
「まさか。3本のビームが1つになってぐるぐる周りながら飛んでいくあれか?」
「そうだ。あれは、ひねり込みに似た原理で、スピードを殺さないで進行速度を落とす働きがある」
「つまり?」
「運動エネルギーという打撃力を殺さないようにしながら、敵の装甲に与えるプレッシャーの時間を長く取るための撃ち方ではないだろうか」
「それって、波動エンジンのエネルギー無しでヤマト主砲が高速空母を撃破できた理由?」
「そうだ。そして、それに波動エネルギーが乗るともう無敵だ。敵艦隊に向けて撃つだけで衝撃波で沈めまくり。至近距離で撃ち込めばブラックタイガーの機銃ですら敵を撃破できてしまう」
「なら、なぜ地球艦隊は冥王星で負けたんだい?」
「酸素魚雷の早期爆発と同じだ」
「は?」
「つまりだな。勝たねばならぬという強い思いが魚雷を過敏に調整してしまい、敵に当たる前に爆発させてしまったのだ。それと同じく、沖田艦隊もあとがないからやり過ぎてしまい、かえって成果を出せなくなっていたのではないだろうか。結果を出せる見込みが無ければ、艦隊を送り出すこともあり得ないだろう」
「ならば古代守艦はなぜ戦えたんだ?」
「問題に気づいてすぐに感度を調整できるミサイルに切り替えて戦ったのだろう」
「ミサイルは有限だが、すぐに調整を直して撃てるわけだね」